『系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに』 三中 信宏著 講談社現代新書 ISBN-13: 978-4061498495 (2006/7/19)
■ワタシは昔、天文サークルに属してた事があったのですが、「本籍」では無いものの、サークル内の「流星屋」さん(流星観測をする人々)を手伝った事がありました。
■流星観測とゆーと、ズッと夜空を見上げて「ロマンチック」に感じられる方も居るかも知れませんが、やってることは非常に地味な(笑)作業で、中でも当時、近隣のサークルと共同で行ってた「ラムカ観測法」と呼ばれる観測は、「円で区切られた空以外を流れた流星は無視」、という地味にも程がある(笑)観測法でした。
■で、終わったら終わったで、今度は得られたデータを処理して、最終的には「単位空間を流れる流星塵の『流量』」を割り出す……ッて分からないヒトにはちんぷんかんぷん(笑)な事をやっていたのでした。
■当時、漠然と感じていたのは「実験による再現が出来ない『観測』データを処理することは、『科学』なのだろうか」と言うことでした。でも、これは何も流星観測に限らず、最新の知見から組み立てられる「宇宙論」は、素人ッぽい言い方をすれば「最先端の科学」と言われている。だったら流星観測だって「科学」なんだろう。。。
そんな風に自分を納得させていた記憶があります。
■『系統樹思考の世界』で前半に説明される、「演繹法」「帰納法」に加えられる第三の推論方法として「アブダクション(abduction:仮説的推論)」、つまり複数の仮説の中から「経験的支持」へのランキングによって「より良い説明」を探る事、そして「『物語(narrative)』としての説明」の章を読んでいて、そんな昔の「素朴な疑問」(笑)を思い出してしまいました。
■考えてみれば、社会学、特に宮台真司氏ご専門の「社会システム論」等も、「経験的支持」による推論方法に依っているし、「社会システム」が、社会の複雑になるに合わせて「宗教」「政治」「司法」……とサブシステムを生成していく、という仮説自体、「系統樹」なんですよね。
そういう意味では、非常になじみ深いものなのに、殆ど意識することなく使っていた「系統樹」を、論理的に「ベストの系統樹を見つけ出す」手法がある、という後半部分も(ワタシには難しい話でしたけれども)非常に刺激を受けました。
■それと、宮台真司氏によれば、社会学では「一般理論」の衰退が著しいけれども、これを「社会システム論」を使えば「何故、衰退するのか」を説明できる、との事。
『系統樹思考の世界』でも、「体系学論争」についての「系統樹」が出てきますが、こういった「自己言及」というのは、ワタシの漠然とした勘でしかないのですけれども、なんだかとっても大事なコト、のように感じられました。

「科学」というより「観察学」なのかも。
科学は観察から法則性を見つけて、仮説を立てる。
そして、もしこの理論が正しければ「こういう場合には必ずこうなる」という法則を実験により確立しようとする仮説の大系ですよね。
観察は科学の前提ではあっても科学ではない気がします。
観察というと、ちょっと違いますが「動物行動学」というのもありますね。
>耕平ちゃん
>「こういう場合には必ずこうなる」という法則を実験により確立しようとする仮説の大系ですよね。
そうなんですよね。
著者によると、「観察可能」「実験可能」「反復可能」「予測可能」「一般化可能」の五原則が「科学」の条件とされてきたけれども、これは早くから成立していた物理学や化学には当てはまるけれども、生物学や歴史学等ではあまりに狭い範囲しか「科学」と呼べなくなる。それよりは「科学」の範囲を広げてみましょうよ、という主張のようでした。
研究である事が必要であって、科学である必要は必ずしもありません。abductionという考え方を押し広めよう、と言う意見には賛成しますが(私の研究もabductionによって成り立っていますからねぇ)。
まあ、それ以前に、商売にならないものは科学として成り立たなくなる事のほうが、現在では問題です。この方針は、小泉政権下で発生し、無能な某首相はそれを継承しています。
本の後半の問題は、種の絶滅において、その種の形態的・遺伝的重要性の観点から多様性への影響のリスクの大小を考えよう、という現在の三中さんの研究のフレームワークの根幹です。これは氏の積年の言動の根幹を理解するための基礎であり、エッセンスです。
>現存さま
「科学」の範囲を広げるのかどうか、「研究」の立場から見れば仰る通りですよね。ワタシはどちらかというと、科学史や科学哲学に興味が強いので、こういう書き方になったのかもしれません。
確証がある訳では無いのですが、「商売になる/ならない」の二項対立、例の「アメリカの上手いやり方」の香りかする気がしてます。
後半についての解説、感謝です。日を置いて読み直してみようかと思ってます。